相続事例6 損害賠償に発展した不動産

はじめに

こんにちは、司法書士AXIS法務事務所です。
今回は、「放置した空き家のリスク」について解説いたします。

事例

Aさんは、父親であるCさんが亡くなったときの相続で弟のBさんと揉めてしまい、相続財産の分配がきちんとできないでいます。

相続財産のなかには不動産(Cさんの実家と土地)も含まれていますが、相続手続きが終わっていないため、名義変更をして売却することができません

そんな状態が何年も続きました。そのあいだに家屋が老朽化していくことは、想像に容易いでしょう。

ある日Aさんは、Cさんの実家のお隣さんからクレームを受けます。内容は「Cさんの家が老朽化して崩れかかっている。このままでは倒れてくる危険があるので、修理をするか取り壊してほしい。万が一家が崩れて被害を受けた場合には、損害賠償請求を起こす」というものでした。

Aさんは、まず取り壊しを検討しました。費用は200万円です。

弟のBさんにこのことを相談しましたが、費用をどうするかでまた揉めてしまい、取り壊しの手続きを進めることができません。

そんなやり取りをしているうちに、悲劇は起きました。老朽化していた家屋がついに倒壊し、隣の家の一部を破壊してしまったのです。

その結果、損害賠償として100万円の支払いを課せられることになりました。

Aさんはこの件を受け、「いよいよ放置するわけにはいかない」とBさんを説得。実家の取り壊しを決めました。

これまでにかかった費用は、取り壊しに200万円、損害賠償で100万円です。
そして、家を壊して土地を更地にしたため、固定資産税は高額になってしまいました。

相続手続きを終わらせ、いつか土地を手放すその日まで、AさんとBさんは高額になった固定資産税を支払い続けることになるのです。

補足
建物がなくなった場合、固定資産税の減額が適応されなくなり、支払い額が倍以上になります。
参考記事:相続事例5 不動産の相続について

全国で増えている空き家

現在、手つかずになって荒れている空き家というのは、全国で増えています。今回のケースにあった倒壊の危険のほか、地域の景観や衛生上の観点からも問題視されています。

この状況を改善するため、「空き家対策特別措置法」というものが平成27年に制定されました。

この法律の中身を簡単に説明すると、「空き家については固定資産税の減額措置を解除し、行政による強制的な対処を可能にする」といったものです。

通常、固定資産税の減額は更地になったときに解除されるものですが、老朽化の進んだ空き家が建っている土地に対しては、更地の場合の固定資産税を請求できるようになったということです。

空き家となってすぐに減額が解除させるわけではありませんが、行政から指導が入った段階で改善することができなければ、減額が認められなくなってしまいます。

指導からしばらくたっても改善がみられないと、強制的に取り壊しなどが行われます。

その場合の費用は一旦は行政が負担しますが、最終的には建物・土地の所有者が支払うことになります。

空き家を放置しておくと、常に大きなリスクにさらされてしまうのです。

まとめ

1,放置した空き家は倒壊の危険性がある。
2,倒壊した場合に、損害賠償のリスクも。
3,空き家に対して行政側で強制的な対処が可能になった

相続時の不動産の取扱いについては判断が難しく、手放すのも難しいです。できれば一度専門家に相談されることをおすすめいたします。

当事務所でも1時間無料相談を受け付けております。お気軽にご相談いただければ幸いです。

関連記事

  1. 相続事例1 死後に発覚した多額の借金

  2. 相続事例5 不動産の相続について

  3. 相続事例4 相続の手続き期限を過ぎてしまったら

  4. 【必見】いらない不動産を捨てる新しいスキームの提案

  5. 限定承認という相続方法について

  6. 相続事例3 連帯保証人は相続対象になるのか

PAGE TOP