相続事例1 死後に発覚した多額の借金

はじめに

こんにちは、司法書士AXIS法務事務所です。

今回から、実際に起こりそうな相続の事例を取り上げて、ご説明いたします。
1回目は「亡くなった夫名義の家を守りたい配偶者」の話を例にあげてみます。

ケース1

状況

1,夫のAさんが亡くなった。
2,家がAさん名義になっている。
3,その家には配偶者(Bさん)が住んでいる。
4,家は手放したくない。
5,Aさんに2000万円の借金があることが発覚。
6,Aさんのご両親は他界されている。

亡くなった後に、故人に多額の借金があることがわかったケースです。

故人の資産状況をしっかりと把握できている人は、実はあまりいません。
死後に債権回収会社からの督促状などを見てから「初めて借金があることを知った」と相談にお越しくださる方は少なくないのです。

特に故人が会社経営者だった場合には、会社の連帯保証人として故人名義で借り入れしていることも珍しくありません。

単純に借金から逃れたいのであれば、相続放棄の手続きを行うことが望ましいです。

しかし、今回のケースでは、Aさん名義の家に、配偶者(Bさん)が住んでいます。
つまり、Bさんは相続放棄をしてしまうと、同時に持ち家も失うことになるのです。

ご遺族には「配偶者(Bさん)が存命のうちは家を残したい」と希望があるので、この意向に沿った相続をご提案してみたいと思います。

相続手続きの例

初めに、持ち家の名義は配偶者(Bさん)にすることにします。

Aさんの死後、何も手続きしない場合には、配偶者Bさんと子ども2人が相続人となるので、子ども2人には相続放棄を行ってもらいます。

第1順位の子ども全員が相続放棄した場合には、第2順位の親世代に相続が移ります。

しかし、今回Aさんのご両親は既に他界しているため、第3順位であるAさんの弟(Cさん)が相続人になります。
そして、弟(Cさん)にも相続放棄してもらうことで、財産はすべて配偶者のBさんが相続できます。

(補足)相続の順位については、こちらの記事にまとめてあります。
相続の順位と遺産分割の割合について

もちろん、財産の全てを相続するということは、借金の2000万円も引き継ぐことになります。

こういった場合には、債権者と支払いについて話し合い、支払い可能な額を少しずつ返していく取り決めをするのが一般的です。

また、配偶者Bさんが亡くなった時に持ち家が不要であれば、Bさんの相続人の全員が相続放棄を行うことで、家と(残っていれば)借金も引き継がずに処理できるようになります。

まとめ

1,亡くなった後に借金が発覚するケースは多い。
2,配偶者以外の相続人が全て相続放棄をすると、配偶者が財産すべてを相続できる。
3,残った借金が多額の場合には、話し合いで毎月の支払い可能な額を決めることが一般的。

いかがでしたか。

今回取り上げた事例は死後に発覚する場合が多いため、遺品整理などで慌ただしいなかで行うことになります。

そのうえ、相続の承認や放棄の手続きの期限は、「亡くなったことを知ってから3か月以内」とされています。

そんな状況ではご自身で期限内に手続きを完了するのは難しく、「どうにかしてほしい」と相談に駆け込んでくる方が少なくありません。

もし現在の状況などで何かお悩みでしたら、1時間無料相談も受け付けております。お気軽にご相談いただければ幸いです。

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